太陽光発電協会発足30周年に向けての初代代表
稲盛和夫氏(京セラ株式会社 名誉会長)からのメッセージ






<はじめに>

JPEA創設30周年、また、34回を重ねて来たシンポジウムの機会に、「JPEA創設者の一人として、メッセージを」とのお声掛けを戴き、このように冒頭で御挨拶申し上げる事になりました。

まず、はじめに、太陽光発電協会が関係者の方々の不断の努力により、数々の実績を残しながら満30周年を迎えられたことを、心よりお祝い申し上げます。

太陽光発電懇話会立ち上げに関わる過去の思い出や出来事に関しましては、先の20周年記念誌で既に詳しく述べさせて頂きましたので、ここでは極、簡単に触れる程度に留めたいと思います。また、その後の10年の歴史は、変遷を詳しく知る方々の筆にお任せ致します。私からは、太陽光発電に対する私の思いと、明るい未来を支える基幹電源として、太陽光発電を成長させて行く使命を帯びた次世代の方々へのメッセージとしてお話ししたいと思います。

私が太陽電池の事業化に取組始めましたのは、第一次オイルショック後の1975年に遡ります。当時は、石油代替エネルギーの必要性が世界的にも注目されていました。しかし、その後に続く1980年代は石油需給も緩和し、太陽電池産業に取りましては冬の時代が続きましたが、諦める事無く事業を続けて参りました。オイルショック後の極めて厳しい経済環境下でも、太陽電池という難しい事業を続けて来られたのは、そこに「明確な大義」があったからだと思います。「世のため人のため、将来必ず太陽光発電が不可欠になる時代が来る」との信念が事業の継続を支えてくれたのです。

他方、この冬の時代に粘り強く進めた変換効率向上や原価低減、用途開発が、その後の太陽光発電市場の形成の中で大きく花開く事になったとも感じています。当時、1W当たり2~3万円と高価な太陽電池を100分の1以下にと目標を掲げた時には、信じて下さる方も少なかったのですが、その後の弛まぬ努力の結果、今日ではこの目標を達成し、更なる原価低減や効率向上に向けた技術革新が進められています。

石油需給も緩和していた時代には、経済性で劣る太陽電池は、壊滅の危機に瀕していました。そのような時に、太陽光発電の需要喚起と普及促進を目的に、志を同じくする企業10社と1団体が発起人となって太陽光発電懇話会が設立され、66法人でスタートしたのです。今では倍増の140もの企業や団体が加盟していると聞き、協会の皆様による、これまでの地道な努力の結果だと感じ入っております。

懇話会設立当初は財政的余裕もなく、各社の手弁当で出発した状況でした。現在でも会員会社が事務局員を派遣し、各種活動にも積極的に参加頂いているとの事で、創設の精神を引き継いで頂いていると感謝しております。太陽光発電協会には、いわゆる産業界の利潤追求の立場を超えて、長期的観点から、国家、人類社会の進歩発展のために、エネルギー産業を通じて社会貢献するという崇高な使命が含まれています。


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<FIT制度の原点>

次に、FIT制度の原点について考えたいと思います。
日本は、古来、国際社会から色々な制度を学び、進化発展させる能力に長けていました。その意味でも、固定価格買取制度をドイツから学び、一挙に太陽光発電を普及させた官と民の関係者の方々は、素晴らしい能力を発揮してきたと思います。

そのような視点で、今日の世界太陽光発電市場を考える時に、忘れてはならないのが、再生可能エネルギー先進国、分けてもドイツの動きだと言えます。1994年にドイツ・アーヘン市議会で可決され、翌年に発効した「アーヘンモデル」とも呼ばれるFIT固定価格買取制度は、ドイツ国内全域、欧州、そして世界の多くの国々へと伝播していった制度でした。

ドイツの西端、ベルギーとオランダに接する人口二十数万人の小さな自治体が発案し導入した制度が、世界の太陽光発電市場の様相を変えたという点で、このモデルを考案し実行に移したアーヘン市民は賞賛され、太陽光発電の世界史に記録される価値があると考えます。

他方、日本に目を転じますと、2012年に導入された固定価格買取制度は、太陽光発電の普及促進に顕著な貢献を示し、既に累計設置量は34GWにも及んだとのことですが、海外での成功事例を元に、日本での普及促進制度へ進化発展させ、一気呵成に太陽光発電を普及させた実績は、日本の優れた面が発揮された事例だと言えます。


はじめに    はじめに


<世界の視点で>

次に世界の動向についてです。
太陽エネルギーは、地球規模で見れば地域偏在せず、どこでも有効利用可能なエネルギー源として降り注いでいます。このエネルギーを世のため、人のために役立て、持続可能な社会を実現することが、美しい地球を次世代へ引き継いでいくことになります。

近年の世界の潮流を見る時、最も重要な流れの一つを生み出したのがCOP21のパリ協定だと言えます。「パリ協定」が採択され、京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減等の新たな国際的枠組みが合意されました。これは、歴史上はじめて、全ての国が参加する公平な合意に至ったという意義をも有しています。後に米国はCOP21から離脱しましたが、世界の潮流を変える事はできないと思います。

その顕著な例がRE100という、民間レベルでの脱炭素社会実現に向けた取組だと思います。既に世界全体で117社が加盟し、自動車、医薬品、食品、アパレルなどの産業を代表する有名メーカーや、小売、金融、IT、あるいは、通信や不動産、運輸等々、多岐に渡る事業分野から多数の優良企業が名を連ねています。

電力源を再生可能エネルギーに切り替えることで、温室効果ガス排出量を削減し、低炭素社会への移行を実現することを目指しているRE100に加盟する企業は増加し続けています。つまり、これまで各国政府主導で展開されて来た脱炭素社会に向けた潮流が、今や民間産業界のレベルにまで波及してきており、持続可能な成長を目指すには企業においても、脱炭素に向けた活動が不可欠になってきている事を反映しているのではないでしょうか。

この流れは、これまで政策頼りだった太陽光発電に、自立の機会が到来した事を意味しており、今後2050年に向けて、一般企業が生き残っていく為にも、脱炭素に向けた取組は必須の活動項目となるでしょう。

このような世界の潮流を研究し、太陽光発電協会から30周年を記念してJPEA  PV Outlook 2050が発表され、2050年の累計稼働容量200GW、国内総発電量比18%、二酸化炭素1億6,300万トン削減という、積極的な目標を打ち出されたと伺っています。日本において太陽光発電を基幹電源に育てる意義と便益を、数値を交えて明確に打ち出された事は大変素晴らしい事だと思います。

太陽光発電に関わる民間企業のみならず、国や自治体、また、研究機関や各種団体等々、産官学がビジョンを共有し、ベクトルを合わせて地道な努力を積み重ねれば、結果は自ずとついて来て、このビジョンを超える事になるだろうと期待しています。


RE100

<次の世代へ>

最後に次世代の皆さんへ伝えたいことを三つ申し上げたいと思います。まず、第1に申し上げたいのは、太陽光発電の目的、意義を明確にし、堅持することです。

太陽光発電には公明正大で明確な大義があります。太陽光発電を通じて地球環境を守り、持続可能な社会を構築し、脱炭素社会を実現する事で、美しい地球を次世代に引き継いでいくという大義です。

第2には、「足るを知る・利他の心」という思想を根付かせることです。 人間の欲望には際限がありません。これまでの大量生産・大量消費に支えられた経済構造を変革し、持続可能な経済活動へ転換するには、RE100メンバー企業に見られるような価値観、即ち、「気候変動・環境問題は事業運営のリスクだ」との認識を社会全体へ広めねばなりません。 昨今の異常気象は「かつて経験した事のない」という形容詞を伴う風水害、あるいは猛暑や寒波を全世界にもたらし、多くの犠牲者を出しています。他方、途上国の人達も先進国のような豊かな生活を享受すべく経済発展に尽力するでしょう。経済発展にはエネルギーが欠かせませんが、先進国が率先して太陽エネルギーを導入する事で、地球への負荷を軽減しながらも皆が豊になる社会が実現可能になるのではないでしょうか。 「足るを知り」「利他の心」で経済活動する事で、脱炭素の持続可能な社会への道が拓かれていくのです。

3番目にお話ししたい事は「成功するまで諦めない」という精神です。 新たな事業を成功させる時もそうですが、新たな社会構造を創り出していく為には、不屈不撓の精神力が必要です。脱・炭素社会は、これまでの化石燃料や原子力にエネルギー源を頼ってきた社会構造の変革を伴います。従来の産業界に働く多くの人達に職場を移って頂く必要もでてくるでしょう。また、更なる研究開発やコストダウン実現にも多大な労力と資金を必要とする事になるでしょう。予想外の課題も出て来ると思います。 しかし、「如何なる事があろうと、未来に美しい地球を引き継ぐために、持続可能な社会を実現するのだ」との強い信念に基づき、この目標貫徹に向け粘り強く、成功するまで諦めない不屈の精神をもって取り組んで頂きたいと思います。

日本が世界をリードする太陽エネルギー先進国となり、持続可能な脱炭素社会の範となる国になって頂きたいと思います。そのためにも太陽光発電協会には、設立の理念に立ち返り、「利他の心」をもって太陽光発電の更なる普及促進に邁進して頂きたいと期待しています。

以上、ご静聴ありがとうございました。


1太陽光発電の目的・意義を明確に2足を知る・利他の心で3成功するまで諦めない



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